Thursday, March 11, 2010
ありがとうございました【M's Curry】
ようやく気持ちの整理がついたので書くことにする。
3月8日早朝。突然のメールが届き、それは訃報だった。
笹塚「M's Curry」のマスターが急逝された。
大事な先輩を亡くし、同時に大事なカレー屋を失う。
見方によっては朴訥な、もしくは無愛想な、もしくは
社交下手なマスターは、接客業とは思えない程ボソボソと
喋り、決してとっつきやすいタイプではない。
初めて訪れたのはもう何年前のことか覚えていないけど、
自分がマスターと喋るようになるまで何年かかかった。
共通の知人を介して段々喋るようになってからは、
その寡黙なキャラクターが嘘のように、どうでもいい
音楽の話、女の話、食べ物の話をするようになった。
「M's Curry」の名物とも言えるブラックジョークの
固まりのような年賀状を貰ったことのある方ならわかると
思うけど、その仮面の下は本当にしょうもない、とても愉快な人で
そんな話を取り留めもなく続ける。ある種KYなマスターは
その営業時間の多くが外に行列を作ってるような店にも関わらず
話しかけてくる。嬉しいが他の客の視線故、気まずいこともあった。
また、自分が話しをするようになった頃、アンチ・ヒップホップ
であったマスターは当初、ヒップホップを「張り付け音楽」
呼ばわりしていたことも鮮明に覚えていて、それでもよく来る
客にダースレイダーや大自然がいること、その他にも会話の内容に
(実によく客人の会話に耳を傾けていたのも面白い)反応し、
それを逐一「今日、ライムスター来たよ(後にそれがD氏、
歌丸氏それぞれ判別可能になる)」だとか、「今日ダースが
デブラージ連れて来たよ」だとか嬉しそうに言ってくるマスターが
なんとも微笑ましかった。
近年はプライベートでも少しだけお付き合いさせていただいていて、
その時も至って店での会話と変わらぬ、しょうもない会話をただただ
続けていたし、連休前の残り食材処理班にされたことや、以前
渡米する際に「M'sのNY支部を頼む」と餞別にカレーをいただいたこと
(冷凍もされていないあのカレーを海外へ「輸出」した精鋭は
そう多くないはず)。思い出すと何一つ重要なことはないのだけど
数多くの思い出は残っている。
もちろん、カレー屋として愛する店だったのは間違いないのだけど
何より、あのわずか10席のカウンターしかない独特の店の雰囲気が、
そして、マスターがいて成り立つ「M's Curry」が大好きでした。
昨日、一足先にお店に別れを告げようとあの商店街を入ると、とても
多くの献花がされていて、また、その後少しの間最後の店内にて
マスターと縁の方々と思い出話をさせてもらっていると、その間にも
訃報を聞いた多くの方が訪れてくる。寡黙なマスターの、それでも尚
持ち得た人望の、キャラクターの偉大さを改めて感じる。
美味しいカレー屋は数多くあれど、自分にとっての「M's Curry」は
もしかしたら二度と現れない存在だとも思う。それくらい、カレーも
人も場所もスペシャルな存在でした。
マスター、今まで美味しいカレーを、ドレッシングを、チャイを、
そして楽しい思い出をありがとうございました。貴方と
知り合えたことで僕の人生は少しだけ豊かなものになりました。
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